朝ご飯はなぜ大切なの?

3回に分けて食べる食事の中でも、現代人が最も気を遣うべきなのが朝食。まず、朝食は起床直後の脳に対して、“脳を動かす唯一のエネルギー源”である血液中のブドウ糖(グルコース)を供給する大切な食事だからです。朝起きるころは血糖値が1日の中でも最も低下する時間帯なので、食品に含まれる糖質(植物性のでんぷん、動物性のグリコーゲン)を消化吸収して血糖値を上げる必要があります。血糖値を一定に保つ体の仕組みの一つとして、「血糖値が増えるとブドウ糖を原料としてグリコーゲンを作って貯蔵し、血糖値が下がると貯蔵したグリコーゲンを分解してブドウ糖を作る」役目を肝臓が受け持っています。肝臓のグリコーゲンは体内で利用しやすいエネルギー貯蔵方式なのですが、貯蔵量には限りがあり、数時間から半日ほど何も食べないでいるとほとんどなくなるといわれています。起床直後には肝臓に蓄えたグリコーゲンが相当少なくなっていると考えられ、すばやく血糖値を上げるためには食事で糖質を補給する必要があります。

脳は成人で1日120gほどのブドウ糖を消費します。1日の基礎代謝の3分の1近くに相当する熱量(約500kcl)で、脳にとって大切な物質です。ブドウ糖を体内で作り出す仕組みとしては、特に身体活動が活発になって肝臓のグリコーゲンからの供給が追いつかなくなると、中性脂肪やアミノ酸を原料としても合成されますが、手っ取り早い方法は食事で糖質を補給することなのです。

にもかかわらず、大人も子供も朝食の欠食率が高いのが社会的問題。糖質を中心にした朝食を確実に取りましょう。糖質中心とは、甘いものだけを食べるという意味ではありません。ご飯やパンなどを主食とすることです。朝食を食べないと、血糖値が上がらず、脳へのブドウ糖の供給が十分に確保されないことから、思考力、集中力、持続力を低下させ、午前中の作業能力に影響を与えてしまいます。特に子供の朝食抜きに対しては、親が注意を払う必要があります。

次に、朝食の大切な役割として、消化吸収にかかわる内臓の「子時計」を脳の「親時計」に合わせて朝の時刻合わせをするという、全身のサーカディアンリズムを整える働きがあることが、最近の時間生物学の研究によって分かってきました。

「朝食の内容は糖質中心に」とはいうものの、速くエネルギーに変えるのにはよくても、それだけで次の食事まで持たせようとすると多量の糖質を取ることになり、必要以上に急激に血糖値が上がったり、消化吸収など体の負担が大きくなったりすることがあります。それを避けるためには、エネルギーに変わるのに糖質よりも時間のかかる脂質やタンパク質を少量組み合わせるのがよいと考えられています。朝定食(ご飯、みそ汁、焼き魚)やモーニング(トースト、マーガリンかバター、卵)の組み合わせにはそれなりに意味があるようです。

ただし、消化吸収能力を超えて食べ過ぎるのは禁物。気分が悪くなったり、体が消化吸収に全力を挙げてかえってぼんやりした気分になったりすることがあります。朝食をとることに慣れていない人は、まずバナナ1本からでも食べるように習慣づけるのが無理ない方法だと考えられます。