食べ過ぎは肥満の根本原因の1つ。メタボリックシンドロームの解消はカロリー制限から…とせっせと減食に励んでいるあなた、ちょっと待ってください。
肥満解消のための減食は確かにある程度必要なのですが、「何を」「どのくらい」食べるか、つまり1日の食事の総量だけでなく、「いつ」「何回に分けて」「どのように」食べるかにも気を配らないと、せっかく減食に励んだ努力が水の泡になるかもしれません。
時間生物学の研究によって、食事の時刻もサーカディアンリズム(生体リズム)に合わせる必要のあることが分かってきました。代謝にかかわる肝臓やすい臓などの内臓は、脳の“親時計”のサーカディアンリズムと連動して、それぞれの働きを制御する“子時計”のサーカディアンリズムを持っており、それらのリズムに沿った規則正しい食事の摂取をしないと、“親時計”とバラバラに動き出すなどの支障が出ることが分かっています。食べる時間帯を間違うと肥満や生活習慣病につながることもあるのです。
また、栄養素の役割とエネルギーに変わる優先順位(まず糖質、糖質が不足したら脂質、それでも間に合わなければタンパク質)とを考えると、主要栄養素である糖質、脂質、タンパク質をいつどのように取るのがサーカディアンリズムに沿ったものか、大体の目安がつけられます。
成人の基礎代謝(身体的・精神的に安静な状態で測定される最小のエネルギー代謝量)は体格や年齢などによって個人差がありますが、20~40歳代成人の平均では、1日当たり男性1500kcal、女性1200kcal程度。これに、体をどのくらい動かすかなど人によって異なる「日中の活動に使われるカロリー」を加えたものが、1日に消費する総カロリーです。計算上、それより多く食べる日々が続くと太り、少ない日が続くとやせることになりますが、基礎代謝に相当する量より少ないカロリーしか取らないと、生きていくために必要な最小のエネルギーも得られないことになるので危険です。
まずは、栄養バランスの整った消費総カロリーに見合った食事を、昼行性の動物である人間のサーカディアンリズムに合わせて「昼間」を中心に取ることが大切です。現代人の生活が夜型に偏ってきているだけに、第1のポイントはこれ。
第2は回数。食料の確保が十分とは限らず、また、電灯がなく夜暗くて起きている時間が短かった昔(200年くらい前まで)は1日2食の習慣だったようですが、夜になっても長時間起きているのが普通の現代人には、朝、昼、晩の3回が妥当です。起きている時間が長い人や消費総カロリーの多い人は4回が適していることもあります。1日に取るカロリーの総量が同じなら、分散して食べる(3~5回程度)方が、肥満など生活習慣病の危険因子が減るとする研究結果もあります。
分散して食べずに、必要な質と量の食事を一度に摂取すると、血液中の糖の濃度(血糖値)が急激に上昇しようとするのを抑えようと、インスリンの分泌が必要以上に増え、エネルギーを体内に蓄える方向に作用して、体内での脂肪の合成を盛んにしてしまうのでダメ。食事の間隔があくと、脳が「飢餓状態」と判断して一気食いを促し、血糖値が上がって脳が満腹だと認識する前に食べ過ぎてしまう可能性もあります。