時間生物学って何?

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ヒトのリズムの特徴

これまでのページでも述べているように、ほとんどすべての生物の生理機能や行動に約1日周期のサーカディアンリズムがみとめられています。ヒトにおいても、睡眠‐覚醒のサイクルをはじめとして、深部体温、自律神経の活動度合い、内分泌(ホルモン分泌)など多くの生理機能や行動が、サーカディアンリズムを示しています。
さらに、生理機能や身体的活動だけでなく、精神的活動においてもサーカディアンリズムの影響がみられることがこれまでの研究で明らかになっています。

ヒトのサーカディアンリズムの特徴をいくつか紹介します。

1. 内因性のリズムである

毎日、昼間に活動し、夜間に休息をとるという生活スタイルの人では、睡眠-覚醒のリズムに都合のよい状態になるように、さまざまな生体機能のサーカディアンリズムが形成されています。また、多くの生体機能が、体内時計の時刻に合わせて規則正しく自律的に変動し、相互に一定の位相関係を保っている内因性のリズムです。

2. 光が強い同調因子である

「サーカディアンリズム」のページでも述べたように、隔離実験において多くの被験者は24時間から少しずれた周期で自由継続(フリーラン)のリズムを示しています。私たちはそれを同調因子によって24時間の周期に調整して社会生活を送っています。ヒトの同調因子となりうるものとしては、光、就床・起床行動、社会的約束事(通勤・通学など)、時刻を知ること(時計)、摂食行動などがあります。
物理的環境の中で一番強い同調因子となるのが、光です。これはほかの生物も同じです。
毎朝明るい光が目に入ることが、視交叉上核を刺激し、体内時計をリセットしています。睡眠相後退症候群(極端な夜型で社会生活に支障があるリズム異常)に対する治療法として明るい光が用いられることがあるのは、光がヒトのサーカディアンリズムに強く影響する性質を活用しているからです。

3. 社会的因子が強い同調因子となりうる

生物リズムにとって最も強い物理的同調因子は2.で述べた光です。ヒト以外の動物では、光は気温や湿度などの他の同調因子とは比べ物にならないほど強力なものです。しかし、ヒトにおいては、光だけでなく、仕事や学校の始業時刻などの社会生活、約束事や人との接触などが社会的同調因子として強く作用することがあります。
ヒトが社会の中で生活していくうえで、こうした社会的同調因子や光などを頼りに体内時計の時刻を調整し、24時間周期のリズムを強固にしています。しかし、同調の詳しい機構はまだ完全には解明されていないのです。

4. 活動リズムの意識的変化が可能である

3.で述べた社会的因子が時として光より強い同調因子となりうるのは、ヒトに高度な精神機能があるからと考えられています。仕事への意欲や責任感などから、意思の力で日常の生活リズムの位相を自分の望む方向へ変えることが、ある程度できます。
また、意識的にリズムの位相を変化させやすいものは、睡眠-覚醒のリズムやこのリズムと強く同調しているサーカディアンリズムであり、体温リズムやホルモン分泌などのサーカディアンリズムは意識の影響を受けにくいと考えられています。したがって、意識的に睡眠-覚醒のリズムを変化させることを乱用すると、身体の中のさまざまなリズムがバラバラになる(内的脱同調)という困った状態をひき起こすことがあります。

5. リズムの内的脱同調がみられる

隔離実験において多くの被験者は24時間より少し長い時間を周期とするフリーランのリズムを示し、体内のさまざまなリズムが相互に同調してフリーランしています。しかし、一部の被験者では、睡眠-覚醒のリズムが、ホルモン分泌や体温のリズムと異なった周期を示すことがあり、この現象を内的脱同調(internal desynchronization)といいます。
隔離実験室での生活が数ヶ月くらい長くなると、さらに多くの被験者で、はじめは体内のリズムが同調してフリーランしていても、やがて内的脱同調を示すようになることが報告されています。これは、(ヒトの)時計機構が視交叉上核に位置する親の生物時計だけではなく、脳の他の部位や内臓などに存在する子時計によっても影響を受けていることの表れだと考えられています。
日常においては、隔離実験室とは違って、体内のさまざまなリズムはだいたいうまく同調していますが、東西方向の飛行や交代勤務などのように、リズムが外部環境や生活サイクルの急激な変化に追いつけないようなことがあると、内的脱同調が起こりやすいと考えられています。

一般に、体温のリズムは、コルチゾール分泌やレム睡眠のリズムと強く同調しており、フリーランをしていても約24時間の周期を大きく外れることはありません。一方、睡眠-覚醒のリズムはカルシウムの排泄リズムなどと強く同調しており、そのフリーラン周期は体温より長めになることが多く、30~40時間というきわめて長い周期のリズムが出現することもあります。このように、内的脱同調は体温系のリズムと睡眠-覚醒系のリズムとの間に生じることが多いと考えられています。

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