サーカディアンリズムとは何か

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ヒトのリズムの異常

ヒトの健康やQOLの土台としてサーカディアンリズムが重要な役割を果たしていることをこれまでに述べてきました。その役割を果たすために、リズムの状態がどのようになっていればよいのか、リズムのパラメータ(周期・振幅・位相)を中心に特徴をまとめてみると、以下のようになると考えられます。

  • 周期:リズムの周期性が安定しているとともに、生活環境の24時間周期にきちんと同調できている。
  • 内的同調:体の中のさまざまなリズムが互いに同調して24時間の周期に合っている。
  • 振幅:少なくとも昼と夜との区別が明確にできている状態。睡眠-覚醒のリズムの場合は、昼間に眠気がなく、夜間の睡眠が安定している。深部体温のリズムの場合は、最高体温と最低体温の差が1度程度はある。
  • 位相:「体の中のさまざまなリズム」のページで述べたように、昼間活動して夜間休息するのに適したタイミングで、体の中のさまざまなリズムが同調している。

ところが、普段の生活で自分のサーカディアンリズムがどのような状態になっているか、上にあげたように適正な状態になっているのかどうか、ということを正確に知ることは、実は大変難しいのです。体の中のさまざまなリズムの状態を知るためには、深部体温やホルモン分泌量を測る必要がありますが、実験室などでは可能であっても、日常の生活では誰にでもできることではありません。

そこで、日常的な手段で記録できる情報をもとにして、自分のリズムの状態を知ることになります。代表的な方法のひとつが、毎日の睡眠の始まりと終りの時刻を記録してグラフに表す(睡眠日誌)というものです。睡眠日誌を数週間あるいはそれ以上の期間記録すると、自分の睡眠-覚醒リズムについて、だいたいの傾向(医学的な判断は専門医による必要があります)を知ることができます。
ただ、リズムのパラメータの特徴としては適正(あるいは平均的)ではない状態でも、その人の生活スタイルによっては特に社会生活に支障のない場合がありますし、その逆の場合もありえますので、ある人の睡眠-覚醒リズムのパターンがリズムの異常、特に、生物時計の機能の異常であるのかどうかについて、判断が難しくなるのです。

ここでは、生物時計の機能が適正ではないことによって社会生活に支障が生じる睡眠-覚醒リズム異常(概日リズム睡眠障害)について、概略を紹介します。いずれの場合も、リズムの同調因子を強化することが対策の基本になると考えられています。
一方、生物時計の機能は正常でも、生物時計に逆らうような社会的要因や生活行動によって一時的に不調な状態が起きる場合については、「時差ぼけと交替勤務」のページで解説します。

(A)睡眠相前進症候群(ASPS, advanced sleep phase syndrome)

平均的な社会生活をする上で望ましい就寝起床の時間帯より数時間も前進したタイミングで睡眠の時間帯が固定している状態をいいます。睡眠自体には問題のないことが多いのですが、たとえば残業をしなくてはいけない場合や夜の宴席に出たい場合でも、夕方早くから眠くなって社会行動に参加できないというような支障が予想以上に大きいとされています。
最近、ASPSの率が多い家系が見つけられるなど、遺伝的な要因も明らかになりつつありますが、この症候群の実態にはまだ不明な点が多いとされています。また、夜明け前から仕事を始めることが必要とされるような生活様式の人では、特に支障を感じない場合もあると思われます。

(B)睡眠相後退症候群(DSPS, delayed sleep phase syndrome)

平均的な社会生活をする上で望ましい就寝起床の時間帯より数時間以上も大幅に後退したタイミングで睡眠の時間帯が固定していて、通勤や通学などの社会的約束事があっても睡眠時間帯を早めてそれに合わせることができない状態をいいます。夜明け近くになって眠り始め、午前後半から昼頃にようやく目覚める例が多く、極端な場合は昼夜逆転に近い状態になるとされています。しかし、長年の生活習慣が固定している場合との区別が難しいこともあるようです。睡眠自体は普通の状態で、睡眠時間がやや長めであるといわれています。子供の場合は学校に定刻に行けなくなるなど、社会生活だけでなく発達や精神的な面でも影響が大きく、大人の場合は平均的な時間帯の仕事に就けないことから、経済的な問題点にもつながる場合があります。また、家族とのコミュニケーションがとりづらいという問題点もあると思われます。さらに、自分の意思だけでは生活時間帯を変えられないのに、やる気がないなどと周囲から評価されがちなことが、より深刻な問題点をもたらすこともあります。

(C)非24時間睡眠覚醒症候群(Non-24, non-24-hour sleep-wake syndrome)

睡眠の時間帯が、平均すると毎日1~2時間ずつ後退していく状態をいいます。睡眠の時間帯が夜間にあるときには睡眠自体の問題点は目立たないものの、そのタイミングで睡眠が固定できずに後退していくと、眠りに入りにくく目覚めにくいという問題点がひどくなっていきます。さらに昼夜逆転の時期になると、昼間の眠気や疲労感が強くて学校や仕事に行きづらくなるので、社会生活の支障が大きいとされています。
Non-24の場合、睡眠時間帯のずれが毎日同じとは限りませんし、睡眠時間の長さがまちまちなこともあるようなので、睡眠日誌の記録が少なくとも1ヶ月くらいはないと、見すごされる場合があるとされています。また、睡眠-覚醒のリズムと体温など他のリズムとが内的脱同調を起こしてバラバラに動いていることもあると考えられています。

(D)不規則型睡眠-覚醒パターン(irregular sleep-wake pattern)

睡眠が細切れ(24時間で3回以上の短時間睡眠)になって、昼夜を問わず一定の時間帯にまとまらない状態をいいます。このリズム異常も、比較的長期間の睡眠日誌の記録がないとわかりにくいようですが、記録をとるのも大変なので、発生率や原因など、まだ不明点が残るとされています。

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