サーカディアンリズムとは何か

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時差ぼけと交替勤務

「ヒトのリズムの異常」のページで触れたように、生物時計の機能は正常でも、生物時計に逆らうような社会的要因や生活行動によって一時的に不調な状態が起きる場合として、時差ぼけ(時間帯域変化症候群、時差症候群)と交替(交代)勤務に伴う睡眠障害について解説します。

これらのリズム異常では、「ヒトのリズムの特徴」のページで述べたように、サーカディアンリズムが外的な環境や社会生活サイクルの急激な変化に追いつけないことによって、体の中のさまざまなリズムに内的脱同調が起こりやすくなることが、不調な状態(夜間の不眠、日中の眠気、作業能率の低下、疲労感、食欲の低下など)につながると考えられています。さらに、これらの不調な状態が、さまざまな事故につながる危険性もあります。

●時間帯域変化(時差)症候群(time zone change (jet lag) syndrome)

東西方向、すなわち経度の差が大きい距離をジェット機などで高速に移動した後、生物時計の時刻と移動先の時刻とが数時間以上ずれて外的脱同調しているだけでなく、体の中のさまざまなリズムが移動先の昼夜のサイクルに再同調していくスピードが異なるために、体内のリズムの間で内的脱同調が発生している状態をいいます。これが、いわゆる時差ぼけの状態です。
現地の時刻への再同調には数日から2週間程度必要で、東西の移動方向や個人の体質・年齢などによる違いがあるとされてきました。最近では、体の中の器官や細胞によって再同調に必要な期間が異なること、長いものでは1ヶ月程度必要な機能もあることがわかってきました。
西向きの飛行では、リズムの位相を後退させる方向へ再同調させますので比較的楽な人が多いと思われますが、東向きの飛行ではリズムの位相を前進させなければならず、時差が小さくても辛い人が多いでしょう。さらに困ったことには、東向きで時差が大きい場合に、体の中のさまざまなリズムが前進方向と後退方向に分かれて再同調することもあるとされています。

時差ぼけの対応策としては、現地の時刻への再同調をより早くすることが基本になると考えられます。具体的には、現地の昼間に屋外などの明るい場所で過ごし、夜は部屋を暗くして眠れなくても休息するのが原則とされます。しかし、時差の大きさとフライトの時間帯によっては、体のリズムが真夜中の頃に現地昼間に到着するような場合があって、到着直後は屋外の光を避けなければならないこともあります。
出発地・移動先・フライトの情報を入力すると、明るい光を目に入れてもよい時間帯、光を避ける必要のある時間帯、休息するべき時間帯などを示してくれるようなプログラムも実用化されているようです。

●交替(交代)勤務睡眠障害(shift work sleep disorder)

交替(交代)勤務という体制の都合から、勤務時間帯が変化することに伴って、睡眠時間帯が頻繁に変化するにもかかわらず、その急激な変化に体の中のさまざまなリズムが追いつけずに内的脱同調が発生している状態をいいます。
時差ぼけの場合は移動先の昼夜の明暗変化と社会生活の昼夜とが一致しているのですが、交替勤務の場合は自分の生活サイクルのタイミングだけが明暗変化や社会の昼夜に対して急激な変化を頻繁に繰り返していて、それが時差ぼけとの大きな違いになっています。

交替勤務に伴う内的脱同調の対策は、時差ぼけの場合よりも難しいかもしれません。それは、勤務ローテーションの回り方や日数の割合によって対応策の方針が変わってくるためです。たとえば、夜の勤務が長期間続く場合とそうでない場合とで、勤務する人のリズム位相を変化させる方がよいのか変化させない方がよいのか違ってくるのです。
日本では、深夜勤務の連続が数日未満という短期のローテーション方式が多いとされています。このような勤務の形態では、深夜勤務以外の勤務日の比率が高いので、昼間活動して夜は休息するというリズムの位相を維持する方が、長い目でみると体に対するダメージが少なくなると推測されます。そのためには、24時間の周期性や昼型リズムを維持することと、深夜勤務中の疲労感を減らすような工夫とを組み合わせることが対応策のポイントになると考えられます。

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