サーカディアンリズムとは何か

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続・光とリズム

目から入った光が、視覚(物体の色や形を判別)とは別の生理的作用(非視覚的生理作用)、すなわち、生物時計の時刻調節作用や、脳の覚醒水準を上げたり交感神経の活動度を高めたり夜間のメラトニン分泌を抑制したりという覚醒方向の作用を脳にもたらすことを「光とリズム」のページで述べました。そして、明るい光の影響が大きいこと、光が目に入る時間帯によってその役割が異なることについて解説しました。
この続編では、光の物理的な特性と非視覚的生理作用との関連について、もう少し詳しく述べることにします。

光は電磁波の一種で、波長380~780nmの範囲が可視光と呼ばれていて、波長の短い方から、虹の7色でいうと紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の順に並んでいます。私達に明るさや色の感覚および非視覚的生理作用をもたらしているのは可視光ですが、太陽や電気照明(白熱灯・蛍光灯など)などの光は、光の3原色(赤・緑・青)を含むさまざまな波長の光が入り混じっているので、普通はどれか特定の色を感じることはなく、「白色光」と呼ばれています。
光の下でさまざまな色彩を感じることができるのは、物体を照らす光が「白色光」だからです。

身の回りにある光について、「白色光」と一口にいっても、その色合いには違いがみられ、光に照らされた物体の色の見え方にも影響を与えます。 太陽の光を例にとると、真昼の日光に比べて、日没直前の光(夕日)は赤っぽく見えます。これは、日出や日没頃の太陽高度では、大気の影響で波長の短い光がより多く散乱されて地表に届きにくくなるため、波長の長い赤色の光の割合が増えるためです。
市販の電気照明の光では、蛍光灯よりも白熱灯の方が波長の長い光の成分をより多く含んでいるために赤っぽく見えます。また、蛍光灯にも、白熱灯のような色合いに近いもの(電球色)から、より白に近いもの(白色、昼白色)、さらに少し青みを帯びているもの(昼光色)まで、さまざまな「白色光」があります。

このような「白色光」の色合いを表すのに、色温度という指標を用います。単位はK(ケルビン)で、太陽や溶鉱炉の鉄のように高温で光を発している物体の絶対温度の単位(K)を借りて、光の色合いを表現しています。色温度が低いものほど赤っぽい色合いの光、高いものほど青っぽい色合いの光となります。

「光とリズム」のページの最後で少し触れましたが、非視覚的な生理作用は、可視光の中でも波長の短い青色成分で特に強いという実験結果が得られています。つまり、より高い色温度の光の方が、覚醒方向の作用が強いというわけです。
これは、脳の視床下部への情報伝達の入口となっている網膜の光受容器が、明るさや色の感覚をもたらすものとは別の種類の細胞で、青色の光によく反応するからではないかと考えられていますが、詳しいしくみはまだよくわかっていません。

しくみはともかく、生活環境の中で光を取り入れる方法としては、朝昼晩の時間帯、すなわち体のサーカディアンリズム位相に応じて、適切な明るさだけでなく光の色合い(色温度、波長成分)も選ぶ必要がありそうだ、ということは理解してもらえると思います。
朝から昼にかけては、青色波長成分の多い、色温度が高めの光をできるだけ多く取り入れることが大切です。一方、夕方から夜にかけては、そのような光を避ける必要がありますので、白熱灯や電球色の蛍光灯を利用するのが無難で、明るくしすぎないように注意しなくてはなりません。

特に、夜間は光に対する感受性が高いと考えられていて、青色波長成分の光をより多く含む光環境で就寝前のまとまった時間を過ごすと、普通の天井照明程度の光の量でも、覚醒方向の生理作用がみとめられます。したがって、その後の睡眠について、自然の睡眠に比べて質が低下するのではないかと懸念されています。しかし、光の直接的影響はすべて覚醒方向の変化として現れるので、青色波長成分を減らした色温度の低い光環境が眠気を増やすと解釈するのは間違っています。たとえ白熱灯でも、光の量を増やせば、夜間のメラトニン抑制などの覚醒につながる反応が出ることが示されています。夜間の光環境については、あくまで脳内で自然に眠ろうとする変化を妨げないようにするのだと考えるべきでしょう。

なお、生活環境としての照明の特性を考える場合には、生理的に望ましい物理的な条件はもちろんですが、心理的な影響や居住性なども考慮しなければなりません。日常生活では、まず必要な明るさを確保して物を見ることが光の主な利用目的となりますから、できれば太陽や月のように、可視光のほぼ全域にわたる波長成分をもつような白色光がより望ましいのです。さらには、心理的な違和感を避けるためにも、特定の波長成分(光の色)だけを強調するような歪んだ特性をもつ光源の利用は好ましくないと考えています。

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