サーカディアンリズムとは何か

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24時間社会とヒトのリズム

24時間社会」という言葉には、24時間休みなく活動を続けている社会、というイメージがあります。「現代用語の基礎知識」では、1972年から1976年版にかけて「二十四時間都市」の記載がみられます。また、1973年、ミヒャエル・エンデが小説「モモ」を発表しました。人間の時間が「時間どろぼう」に盗まれてしまった結果、都市が24時間化されてしまうという描写が出てきます。どうやら、1970年代前半というのが社会環境の転換期にあたっていると考えられます。

社会の24時間化につながる現象とそれに関連する主な技術開発について、下の表にまとめてみました。

参考:「環境生理学」北海道大学出版会、p390-404、2007

24時間社会につながる現象と技術開発の変遷
西暦年 社会現象 技術開発
1953 住宅に蛍光灯普及し始める
1964   名神高速道路開通
1969 高速夜行バス クォーツ腕時計
1972 24時間都市予測;日本  
1973 小説「モモ」  
1975 コンビニ24時間営業 3波長型蛍光ランプ
1978 24時間テレビ「愛は地球を救う」  
1980 24時間テレビニュース(CNN)  電球形蛍光ランプ
1985   電子メール公的許可
1986 24時間取引;ロンドン-ナスダック  
1987 24時間テレビ放送;衛星第1 都市型CATV
1989 CM「24時間タタカエマスカ」 家庭用24時間風呂
1994 商用インターネット  
1995 パソコン・インターネットの普及 Windows95発売

このような社会的あるいは技術的な変化によって、サーカディアンリズム同調因子が弱体化していることが懸念されています。まず、光環境について、主に蛍光灯の普及と電力供給が安定化したことによって夜の明るさが増えただけではなく、生活様式が変化して昼間に屋外に出る時間が少なくなってきたことから、昼夜の明暗変化が小さくなっていると考えられます。次に、社会的な同調因子についても24時間の周期性が保証されない傾向があると考えられます。

結果として、「日本人の生活とリズム」のページで述べたように、睡眠をはじめとする生活の夜型化がわずか数十年の間に進行したと考えられます。それに伴って、睡眠時間が減少したり、運動不足の傾向が顕著になったりと、QOLを支えるサーカディアンリズム自体が弱体化する危険性が増えていることが心配されます。
対応策の基本は同調因子の強化です。現代の24時間社会では、リズム異常への対応に限らず、生活習慣マネジメントの基本として同調因子の強化を考えなければなりません。

もうひとつ忘れてはいけない社会的な変化として、「時間」に対する人間の意識にも激変がありました。時刻の分解能がせいぜい1時間程度と思われる明治時代の初めからわずか100年くらいの間に、日本の「時間管理」は分秒という単位で行われ、「時計に追われる」度合いは、もすごい速度で世界トップクラスに変貌してしまいました。しかし、人類は「時間」そのものを制御する技術を持っているわけではありません。むしろ「時間」に追われ、24時間社会という「時間のあり地獄」に陥っているかのようです。

「時間」の凶器性にどう対応すればよいのか、現代人にとって難問です。社会的同調因子の拘束力がもたらす精神的な負荷を軽くするという観点からは、数分あるいは数秒という物理的にはわずかな時間でも、1日の生活の中で「自分の時間」という実感を持てるような生活行動を意識付けることが「時間」と向き合うひとつの対応策になるのかもしれませんが、それを確かめる術を私達はまだ持ってはいません。
一人一人の「時間」と「サーカディアンリズム」、すなわち「ひとリズム」を大切にすることが、「自分らしい」QOLにつながっていると考えられるのです。

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